鈴木おさむ vs 今井舞

鈴木おさむ vs 今井舞

 放送作家の鈴木おさむさんが土曜日のラジオ番組で、「こういうとこで話すのはやめようと思ったんだけど……」と切りだした上で、今井舞さんというライターを強い口調で批判していました。「気に入らないことは気に入らないとはっきり言おうと思っ」たそうです。

 「週刊文春」は、今井さんによるドラマ評を1クール(四半期)ごとに掲載しています。そして、鈴木さんは問題にしているのは、同誌5月19日号に掲載された2011年春のドラマ評。今井さんがやり玉にあげているのは、鈴木さんが脚本を担当する「生まれる。」(TBS系)というドラマです。

 51歳で妊娠した母とその家族の生きざまを描く内容で、これまで連続ドラマが取りあげてこなかったテーマに向きあっています。母の妊娠以外、劇的な展開はありません。ひたすら高齢出産を賛美しているわけでもなく、細かいエピソードを重ね、ストーリーは進んでいきます。

 今井さんは、このドラマの感想として、構成の「ワケわからん」部分や「ありえんエピソード」などを紹介した上で、こう述べます。

 「脚本を手掛けたのは人気放送作家の鈴木おさむ。どうりでセリフも筋もご都合主義な訳だ。推敲ゼロでも出来る安バラエティ気分で、人の心の機敏さを描くドラマ界に携わるんじゃねえ、このド素人が!」(同誌5月19日号、39p)

 これに対して、鈴木さんは5月13日のツイッターで、以下のように反応。

 「今井舞というライター、週刊文春で僕のドラマの批判「推敲ゼロで出来る安バラエティ気分で、人の心の機敏を描くドラマ界に携わるんじゃねえ、このド素人が!」だって(笑)。僕のことはいいけど、安バラエティって何?バラエティ、みんな寝ないで作ってるよ!テレビ分かってねえなぁ(笑)」

 さらに、冒頭で紹介したラジオ番組で、同誌に掲載された『生まれる。』に対する今井さんの寸評は、「辛口じゃなくて、悪口です」と鈴木さんは述べていた。

 私たちは「悪口」が大好きです。だから、名誉毀損にならない程度の悪口であれば、制作側の都合など気にせず、週刊誌は平気で載せてしまいます。また、ドラマに対する評価は人それぞれなので、いろいろな意見が公表されることについては、言論の健全さを示しているともいえましょう。

 とはいえ、悪口も度が過ぎると、読んでいて気分が悪くなります。『生まれる。』評にかぎっていえば、今井さんの文章はたしかにただの悪口としか読めないし、この程度のあら探しなら素人の書き手でも簡単にできるのでは。要は、鈴木さんが問題にしているのは、今井さんの「プロの書き手」としての手腕であるように思えます。

 テレビ関連でいえば、対象を批判するときにも最低限の品位を保ち、けっして悪口にはならない文章を書きつづけたのがナンシー関さんでした。ならば、ナンシーにあって、今井さんにないものは何か。「批評って、ひとつまみの愛が必要」だと鈴木さんはいっていましたが、そのへんが両者の決定的な違いなのだと思います。

 いまの調子で品のない悪口を書きつづけていたら、今井さんはそのうち読者に飽きられてしまうんじゃないのかなあ。でも、そうじゃないから、週刊文春は彼女を起用しているのでしょう。つまり、私たち読者が「ひとつまみの愛」など必要ない、品のない悪口を求めているってことになっちゃうけれど……。そうだったら、ちょっと悲しいですね。

(谷川 茂)